システム同定論
科目区分 | 専門教育科目(情報) | 対象学年(以上) | 4年 |
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科目名称 | システム同定論 | 単位数 | 2.00単位 |
講義題目 | システム同定論を学ぶ | 曜日・時限 | 木曜2限 |
担当教員 | 戸田 尚宏 | 開講時期 | 2019年度前期 |
到達目標 | 現実の世界で起こりえる事を計算機シミュレーションにより予測するためには、計算機のプログラム、即ち、シミュレーションモデルが正しく作られている必要がある。株価などの経済指標、あるいは筋電図や心電図、体液中の物質の濃度変化、脳波と言った生体から得られるデータは対象の複雑な情報処理過程の一部を反映するものであり、そうしたデータから、最大限の情報を引き出し、妥当なモデルを構築する努力がなされ続けている。データからモデルを構築する事をシステム同定と呼んでいる。本講義を履修することによって、システム同定のための標準的な方法論とその成立過程について理解でき、対象システムの特徴を適切に把握し、計算機プログラムとしてモデル記述できる。 | ||
授業概要 | 現実の現象を計算機で再現する際、どの程度近く再現出来ているかを反映する基準が必要となる。本講義ではまず、その尺度としてデータの存在する信号空間における距離を定義し、その距離を最小化する規範について一般論を述べ、そこから直交関数を導出し、直交関数系の典型例としてフーリエ級数展開を導く。さらに、サンプリングによる時間離散化によって起こる不具合とそれが起こらないための条件について述べ、離散時刻システムモデルとしてFIR、IIRフィルタを用いた場合の具体的な同定手続きについて述べる。さらに、IIRフィルタ表現を用いたスペクトル推定法に関しても発展させる。適宜、実際の信号を用いた解析の実習も行う。 | ||
授業計画 | 第1回 システムと入出力信号 : ・システムとして捉えられる物事の例 ・計算機でシステム(現象)を再現する意義 第2回 N次元ベクトルとしての信号 : ・信号間の距離・信号空間 ・信号空間の次元が低い場合の回帰直線の幾何学的意味 第3回 最小二乗法: ・信号空間でユークリッド距離を最小とすることが最小二乗法 第4回 関数の線形結合モデルによる最小二乗近似: ・多項式等の1次独立な関数系による回帰曲線 ・正規方程式 第5回 直交関数系 : ・正規方程式の問題 ・グラムシュミットの直交化 ・直交関数系の例 第6回 フーリエ級数: ・周波数の概念 ・複素フーリエ級数表示 第7回 離散的フーリエ変換 : ・サンプリング ・エリアシング ・サンプリング定理 ・離散フーリエ変換の性質 第8回 離散フーリエ変換の拡張 : ・無限和への拡張の必要性 ・無限和離散フーリエ変換 ・周波数の連続変数化・無限和離散フーリエ変換の性質 第9回 離散時間システムモデル(1) : ・FIRフィルタと畳み込み・ブロック線図・周波数伝達関数 第10回 離散時間システムモデル(2) : ・漸化式によるインパルス応答表現と畳み込み ・IIRフィルタ記述と伝達関数・フィルタの接続と伝達関数 第11回 不規則信号のモデル : ・不規則信号の確率による記述 ・不規則信号の期待値 ・不規則信号のモデル ・パワースペクトル 第12回 FIRフィルタによるシステム同定 : ・同期加算法によるインパルス応答の推定 ・Wiener-Hopfh方程式 第13回 自己回帰モデルによるシステム同定: ・Yule-Walker方程式 ・最適線形予測方程式 第14回 自己回帰モデルによるスペクトル推定 : ・ノンパラメトリックなパワースペクトルの推定 ・パラメトリックモデルとしての自己回帰モデル ・自己回帰モデルによるパワースペクトルの推定 第15回 システム同定演習 : ・実際の信号を用いたシステムのインパルス応答の推定、 パワースペクトルの推定など レポート提出方法の説明 |
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授業外学習 | 復習:演習課題をレポートとする。演習課題がない場合は講義資料の内容を自分で導出する。 予習:講義資料の次回の講義の内容に該当する箇所を読み、疑問点を整理しておく。 |
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履修上の注意 | 回路基礎論、ディジタル信号処理、音声音響情報処理論、シミュレーション数理I&II、などに深く関連しているので、それらの何れか、または複数の講義を受講しているとより理解が深まる。 | ||
成績評価の方法 | 講義中出題の演習課題(30%以下)、最終演習課題(70%以下)、講義に対する積極性・学習態度を総合して評価する。 | ||
教科書 | 配布する講義資料 | ||
参考書 | 「システム同定」計測自動制御学会編 など |