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ペトリネットのあるマーキング
と
トランジションの列
に対して、
から
の各トランジションが順次発火可能であるとき、
すなわち、
,
,
,
が成り立つとき、
は
から可能な発火系列(legal firing sequence)であるという。
これを、
と表す。その結果のマーキングが
であるとき、
と書く。
空列
(トランジションを1つも含まない「列」)に対して、
であるものとする。
ペトリネット
の初期マーキング
から遷移可能な
マーキング全体の集合を可達集合(reachability set)といい、
と書く。
形式的には、
.
ただし、
を空列も含むトランジションの列全体の集合とする。
例 7
図
2のペトリネットの可達集合は、
![$R(N,\,m_0)=\{[k+3\,2\,1\,1]^T$](img80.png)
,
![$[k\,1\,2\,2]^T$](img81.png)
,
![$[k\,0\,3\,3]^T$](img82.png)
,
![$[k\,2\,0\,1]^T$](img83.png)
,
![$[k\,1\,1\,2]^T$](img84.png)
,
![$[k\,0\,2\,3]^T$](img85.png)
,
![$[k\,1\,0\,2]^T$](img86.png)
,

である(確かめてみよ)。
ペトリネット
と目的マーキング
を与えたとき、
となる発火系列
が存在するかどうかを
可達問題(reachability problem)という。
ペトリネットの制御としては、
「発火可能なトランジションの発火を許可または禁止する」
方法が一般的である。
可達問題はこの制御方法による可制御性と解釈することができる。
マーキング
から可達な任意のマーキング
に対して、
トランジション
が発火可能なマーキング
が
から可達であるとき、
は
で活性(live)であるという。
すべてのトランジションが初期マーキング
で活性であるとき、
ペトリネット
は活性であるという。
活性は定常動作の可能性に関係が深い。
自然数
に対して、
初期マーキングから可達な任意のマーキング
で
が成り立つとき、
プレース
は
-有界(
-bounded)であるという。
1-有界であることを特に安全(safe)であるという。
任意の自然数
に対して
なるマーキング
が可達であるとき、
プレース
は非有界であるという。
すべてのプレースが
-有界であるとき、
ペトリネット
が
-有界であるという。
実システムのモデルは有界でなければならないし、
とくに(2値)論理のモデルは安全でなければならない。
問題 4
図
2のペトリネットについて、以下の問いに答えよ。
1. 初期マーキング
から、
は可達であるか。
もし、可達であれば、
となる発火系列
の1つを求めよ。
2. 各トランジションの活性を判定せよ。
3. 各プレースの有界性を判定せよ。
ペトリネット
の入出力接続行列(input/output incidence matrix)
、
は
以下に定義される
行列である。
また、
を接続行列という。
例 8
図
2のペトリネットの接続行列は以下のとおりである。

には

と

の間の往復アーク(セルフループ, self-loop)が
表現されていないことに注意する。
を
に対する
発火ベクトルという。
マーキング
で
が発火可能であることは、
と表される。
であるとき、
である。
マーキング
から発火可能な
発火系列
に対して、
とする。
の発火の結果のマーキングを
とすれば、
である。
を
の発火回数ベクトル(firing count vector)という。
問題 5
方程式

を用いれば、
可達問題は容易に解くことができそうであるが、実際にはそうではない。
その理由として、どんなことが考えられるか。
問題 6
図
8のペトリネットの
入出力接続行列

,

、および、接続行列

を求めよ。
また、(入出力)接続行列を用いて
マーキング
![$m_0=[0\,0\,1\,1]^T$](img115.png)
から、
トランジション

が発火可能であることを示し、

の発火の結果のマーキングを求めよ。
図 8:
ペトリネット
 |
あるマーキング
から発火可能な
空列でない発火系列
の発火の結果のマーキングがふたたび
であるとする。
の発火回数ベクトルを
とすれば、
より、
が成り立つ。
方程式
の非負整数解
をTインバリアント(T-invariant)という。
各プレース
に非負整数の重み
を考える。
はトークンの重み付き和である。
もし、
が成り立つならば、
から可達な任意のマーキング
に対して、
より、
重み付き和は不変である。
方程式
の非負整数解
をSインバリアント(S-invariant)あるいは、
Pインバリアントという。
問題 7
図
8のペトリネットのTインバリアント、Sインバリアントを求めよ。
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