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: ペトリネット
ペトリネットのあるマーキング と
トランジションの列
に対して、
から の各トランジションが順次発火可能であるとき、
すなわち、
,
, ,
が成り立つとき、
は から可能な発火系列(legal firing sequence)であるという。
これを、 と表す。その結果のマーキングが であるとき、
と書く。
空列 (トランジションを1つも含まない「列」)に対して、
であるものとする。
ペトリネット の初期マーキング から遷移可能な
マーキング全体の集合を可達集合(reachability set)といい、 と書く。
形式的には、
.
ただし、 を空列も含むトランジションの列全体の集合とする。
例 7
図
2のペトリネットの可達集合は、
,
,
,
,
,
,
,
である(確かめてみよ)。
ペトリネット と目的マーキング を与えたとき、
となる発火系列 が存在するかどうかを
可達問題(reachability problem)という。
ペトリネットの制御としては、
「発火可能なトランジションの発火を許可または禁止する」
方法が一般的である。
可達問題はこの制御方法による可制御性と解釈することができる。
マーキング から可達な任意のマーキング に対して、
トランジション が発火可能なマーキング が から可達であるとき、
は で活性(live)であるという。
すべてのトランジションが初期マーキング で活性であるとき、
ペトリネット は活性であるという。
活性は定常動作の可能性に関係が深い。
自然数 に対して、
初期マーキングから可達な任意のマーキング で
が成り立つとき、
プレース は -有界(-bounded)であるという。
1-有界であることを特に安全(safe)であるという。
任意の自然数 に対して なるマーキング が可達であるとき、
プレース は非有界であるという。
すべてのプレースが -有界であるとき、
ペトリネット が -有界であるという。
実システムのモデルは有界でなければならないし、
とくに(2値)論理のモデルは安全でなければならない。
問題 4
図
2のペトリネットについて、以下の問いに答えよ。
1. 初期マーキング から、
は可達であるか。
もし、可達であれば、
となる発火系列 の1つを求めよ。
2. 各トランジションの活性を判定せよ。
3. 各プレースの有界性を判定せよ。
ペトリネット の入出力接続行列(input/output incidence matrix)
、
は
以下に定義される 行列である。
また、 を接続行列という。
例 8
図
2のペトリネットの接続行列は以下のとおりである。
には
と
の間の往復アーク(セルフループ, self-loop)が
表現されていないことに注意する。
を に対する
発火ベクトルという。
マーキング で が発火可能であることは、 と表される。
であるとき、 である。
マーキング から発火可能な
発火系列
に対して、
とする。
の発火の結果のマーキングを とすれば、
である。 を の発火回数ベクトル(firing count vector)という。
問題 5
方程式
を用いれば、
可達問題は容易に解くことができそうであるが、実際にはそうではない。
その理由として、どんなことが考えられるか。
問題 6
図
8のペトリネットの
入出力接続行列
,
、および、接続行列
を求めよ。
また、(入出力)接続行列を用いて
マーキング
から、
トランジション
が発火可能であることを示し、
の発火の結果のマーキングを求めよ。
図 8:
ペトリネット
|
あるマーキング から発火可能な
空列でない発火系列 の発火の結果のマーキングがふたたび であるとする。
の発火回数ベクトルを とすれば、
より、 が成り立つ。
方程式 の非負整数解 をTインバリアント(T-invariant)という。
各プレース に非負整数の重み を考える。
はトークンの重み付き和である。
もし、 が成り立つならば、
から可達な任意のマーキング に対して、
より、
重み付き和は不変である。
方程式 の非負整数解 をSインバリアント(S-invariant)あるいは、
Pインバリアントという。
問題 7
図
8のペトリネットのTインバリアント、Sインバリアントを求めよ。
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ohta@ist.aichi-pu.ac.jp