今回は愛知県立大学長久手キャンパスで東海日本語ネットワーク 副代表の米勢治子さんをファシリテーター、本学非常勤講師の宮坂ヘジーナさんと医療現場で活躍されておられる山田新さん、梅村純恵さんをコメンテーターにお迎えしてワークショップを行いました。
今回のテーマは『医療現場で使える「やさしい日本語」を考える』ということですが、ここにおける
「やさしい日本語」とは海外から日本に来ている外国人の方々が震災時や公文書、日常のニュースや住んでいる自治体の規則、予防接種などの医療機関のお知らせを正しく理解できるように分かりやすく言い換えられた日本語のことを指します。震災時や緊急時は情報の正確な把握が生死を分けますし、外国人が正しく理解することも重要ですが、提供する側の我々も分かりやすく・正確に情報が伝えられるように努力しなければなりません。
もちろんそれぞれの言語に変換した情報提供が1番望ましいのですが、多言語対応のコスト削減を
目的として近年では一定レベルの日本語による情報提供がなされるようになってきているそうです。
「やさしい日本語」への変換のポイント
・重要度が高い情報だけに絞り込む
・1文を短く、構造も簡単に(1文に1情報)
・難解な語彙を言い換える(漢語・外来語・擬音語・受け身・使役・敬語・方言は避ける)
・曖昧な表現を避ける(二重否定、「~の可能性がある」)
・漢字を使うときはルビを振る
・重要なところは色や大きさを変える
・音声ガイドの活用
他にもイラストやジェスチャーを使う、器具などがあれば実際にやってみせるなどの視覚情報も有効な手段だということです。
実際相手に接する際のポイント(窓口対応など)
・笑顔で接する→「あなたの味方ですよ」という安心感
・傾聴する、待つ→「聞いていますよ」という意志表示
・たくさん話さない→必要な情報を最小限で伝える
これらのことを踏まえて病院で言われそうな指示や自治体の予防接種のお知らせ、地震のニュースをどのように翻訳したり相手に伝えるかをグループで話合いました。これからの講座や実際の医療通訳で生かせそうなポイントがたくさんあり、大変有意義だったように思います。
最後に医療現場で外国人の方に言いたいことが伝わらず困った事例が紹介されました。
例えば赤ちゃんの便の状態について、赤ちゃんは生まれてから数日間便の色が変化するそうです。
日本語で「便の状態」とすると日本人は理解できますが、外国の方は何が求められているのか分からないことが多いので、単に「便」または「うんち」はどうですか?と尋ねた方が良いということでした。
また医療通訳が入ることができない、手術室や各自治体にいる職員の外国語能力や、外国人そのものの日本語能力をもっと養成する必要もあるという指摘もありました。
今回のワークショップでは私たち自身が視点を変え、「日本で生活する外国人」の立場になって日本語を言い換えることの大切さを知る事ができました。ただ単に文章を訳すのではなく、相手に伝わるように必要な場合はより易しい日本語に変えて、ジェスチャーなどを用いながら相手に対応しなければなりませんね。