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医療分野ポルトガル語スペイン語講座
(ポルトガル語スペイン語による医療分野地域コミュニケーション支援能力養成)
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平成23年度公開シンポジウム 「大震災から医療通訳を考える」

最終更新:2011年11月 3日 23:27

このイベントは終了しました。多数のご参加ありがとうございました。

 

平成23年度公開シンポジウム  「大震災から医療通訳を考える」  

 
[日時] 11月3日(木) 14:30~17:30
 
[場所] 愛知県立大学 長久手キャンパス 学術文化交流センター 多目的ホール
 
[パネリスト] 
      林田雅至氏:   大阪大学コミュニケーションデザイン・センター教授
      細井陽子氏:   豊田厚生病院看護部長
          大城ロクサナ氏:  ひょうごラテンコミュニティ代表
 
[司会・進行] 小池康弘  愛知県立大学外国語学部ヨーロッパ学科スペイン語圏専攻教授
 
 
あいさつ    (外国語学部長 大野誠)
 本学で平成19年度から開講している医療分野ポルトガル語スペイン語講座の一環として毎年公開シンポジウムを開催している。3月には東日本大地震がおき多くの方が被災した。今回はこの大震災や阪神淡路大震災からの教訓をもとにこれからの医療通訳について考える機会としたい。夏には岩手県立大学との連携のもと77名の本学学生が岩手県でボランティア活動を行った。また、愛知県でもあいち医療通訳派遣システムが立ち上がった。このシンポジウムを通して多くのことを皆さんに考え学んでいただければと思う。
 
 
パネリスト紹介
 
林田雅至: 専門分野はポルトガル語圏文学・文化・宗教民俗等。ブラジル文化に精通し、関西を中心に多文化共生の取り組みに尽力、外国人支援に関わる。
 
細井陽子: 豊田厚生病院にて看護部長を務める。外国人住民が多く居住する地域に立地し、日常的にスペイン語・ポルトガル語の医療通訳者と関わっている。また当病院は災害時の拠点病院に指定されている。
 
大城ロクサナ: ペルー人でひょうごラテンコミュニティの代表を務める。来日してまもなく阪神淡路大震災を経験し、ことばの不自由さから外国人支援の必要性を痛感する。当NPOの立ち上げにも関わる。
 
 
シンポジウム
 
大城ロクサナ
 
1991年ペルーより来日し、阪神大震災にあったときはまだ日本語がほとんどわからない状態だった
そのとき精神的に一番辛かったのは"ことば"がわからなかったこと
  →自分のことについて、将来のこと、すべてにおいて不安になってしまった
ラテンコミュニティの中でもおそらく7割の人たちは日本語が不十分な状態である
 
・医療通訳として
5年ほど医療通訳をしているが医療用語などは難解なため、日本語がある程度できるレベルでは通訳をするのは難しい
外国人患者は日本と本国の医療文化の違いに戸惑うことが多い (例)説明が少ないため薬をもらっても安心できない
通訳がいることにより不安が軽減され、安心できる
 
・ひょうごラテンコミュニティの活動
1991年立ち上げ
FMわぃわぃ(コミュニティラジオ)にて阪神大震災後には被災者への情報提供を行う
  ※FMわぃわぃは当初5言語でスタートし、現在は17言語で情報発信している 
東日本大震災の際にもスペイン語にて情報提供を配信している
 
ラジオを通じた宮城で被災したペルー人女性等との交流
  →母語で話せることにより精神的ケアとなった
外国人ガン患者と医者との間におきたすれ違い
  →通訳として間に入ることで、言葉を単に訳すだけでなく、心が通じ合い患者の心のケアにつながった
 
 
細井陽子
 
・豊田厚生病院について
豊田市浄水町(愛知県立大学から約10km)にあり、25の診療科目、一般病棟600床、感染症病棟6床を有する
また救命救急センター(30床)、ヘリポートを整備し、災害拠点病院でもある
 
・特徴
西三河北部医療圏の基幹病院であり、豊田市の市民病院的役割を果たしてる
在日外国人(ブラジル人)の住民が多く居住する地区に隣接している
  ⇒職員としてポルトガル語の通訳者を導入 (今年度で20年目を迎えた)
 
・豊田厚生病院の医療通訳
3名(正職員2名、パート1名)でポルトガル語とスペイン語に対応
基本勤務時間は8:30~17:00であるが患者の状況にあわせた時間延長を行う
通訳・翻訳が主な業務であり、院内PHSにて常に通訳要請に対応できる体制
医療通訳者のうち、1名が看護師資格(ブラジル)、ほか1名は臨床心理士(アルゼンチン)の資格を保持
 
院内の表示はポルトガル語併記
通訳を希望する入院患者数は年間170名弱 (平成22年度の通訳件数は10,184件)
受け持ち患者制・・・一度かかわった患者には経過を知っている者が出向く
 
通訳業務:外来、検査説明、手術室、分娩室、病棟、会計、電話対応等、多岐にわたる
  →栄養指導、母親教室、病気に対する悩みの相談なども含まれる
   また、手術・分娩には必ず立ち会い、麻酔が効くまでもしくは最後まで付き添う
翻訳業務:問診表のほか、各個人への健康診断報告書、看護計画書等
 
・通訳がいるメリット
患者と医療者の間に信頼関係が生まれ、スムーズに回復へ導くことができる
「異国で患者」という不安の中での安心感 →精神的支援も回復への一助
 
在日ブラジル人も高齢となり、慢性疾患で長期間にわたりかかわることが多くなった
メンタルサポートを必要とする患者 →臨床心理士資格所持者によるカウンセリングを実施(週1回)
 
・大震災から医療通訳を考える
災害時の外国人の状況・・・パニック、ことばの壁(正しい情報が伝わらない)、不安や戸惑い
多くの人が集まる病院が情報源になりこともあり得る 
  →病院の二次的役割(地域と行政のつながりの糸口)
 
 
林田雅至
 
マイノリティ・コミュニティを考察する
 
・数量根拠からマイノリティ・コミュニティを考える
言語延命の数字・・・2名 (最低2名いなければ会話が成立しない)
  教育現場40名クラスサイズでの言語・文化を継承維持する最小単位2名=5%
 
母社会のなかの5%人口とは?
  大阪市人口約260万人に対する5% = 在朝・在韓人口14~15万人
  サンパウロ市人口約1,100万人に対する5% = 日系移民人口55万人
 
現状の日本社会に対する在日外国人は2%を切っている ⇒目に見えない存在(100人に2人しかいない)
外国人住民が多いと言われる浜松市でも4%である
母社会が小さいほどマイノリティの存在はクローズアップされず行政の手も届きにくい
 
・数量根拠に基づく外国語学習を考える
言語習得基準参照値:6750時間
日本の外国語学部系(4年間):2700時間+留学による学習4800時間(300日×16時間)
言語習得は運動や音楽と同様に積み重ねが必要
 
医療通訳として求められる語学レベルは高く、現実とかい離している
  →まずは相談に乗れる人材を育成することが現実的
医療行為に関する通訳と精神的ケアのための通訳とを切り離す 
  →前者は医療従事者、後者を学生などが行う
 
・ポルトガル語の「音韻ループ」構築のための作成テキストを考える
20世紀ポルトガル現代詩人ジョゼ・レジオ作名作戯曲『ベニルデあるいは聖母マリア』(1947年)における「感情表現動詞」を活用したポルトガル語音韻ループ(言語音感)を身に付けるための手引書
 
・Android仕様多言語問診表試作品第一号紹介(株式会社ミウラより)
 「情報視覚化による多言語問診票の開発」を行い、タブレット型モニターの試作品が完成した。
 
 
<Q&A>
 
Q:医療文化の違いという話があったが、病院の仕組み、診断の仕方などほかにも日本とラテンアメリカでの違いを感じるか。
大城:医者も看護師も外国人患者がきたときに不安視する。こちらが日本語を話す前から外見で判断して英語で話しかけられることもある。外国人だからといって特別視しないでほしいと思う。そこですでに壁ができているように感じる。また、現在の医療通訳はボランティアのような扱いで報酬はないに等しい。通訳は患者のためだけでなく病院側にも必要なものだ。患者はお客様でもあるのだから病院から多言語に対応してほしいと思う。現状は患者自身が通訳を確保しなければならない。
 
Q:FMわぃわぃは愛知県でも聞くことができるのか
大城:インターネットで世界中から聞くことができる。スペイン語番組は毎週(水)夜8時から9時に放送されている。
 
Q:ほかの基礎講座で、日本語のわかる自分の子どもを通訳として連れていくことはことばの理解力の問題からもすべきではないといわれていたが、どう思うか。
大城:患者が通訳を探さねばならず実費が必要となる現状では、自分の子どもを通訳として連れて行こうとする親はいる。しかし、いくら日常生活に問題のない日本語力があっても子どもの理解力では無理があり役には立たない。何よりも精神的負担も大きく可哀想だ。
 
Q:外国人患者対応に関する看護職員への教育や研修はされているのか
細井:約20年間専任通訳がおり、現在も3名いるため特にしていない。説明が必要なものは翻訳を用意している。
 
Q:分娩には夜間、深夜も立ち会うのか
細井:立ち会いは昼間のみ
 
Q:文化の違いによりブラジル人患者からでた要望はあるか
細井:面会時間を延ばしてほしいというようなことはあった
 
Q:医療通訳者はボランティアでは駄目だというお話があったが、もう少し詳しく知りたい
林田:現在の医療通訳養成が掲げるミッションは過大(欧米レベル、医療過誤の問題等も含め)であるが、報酬は交通費+α程度しかなくボランティアに近い。求められるレベルが高いにも関わらず、いざ技術を習得しても経済的自立ができないのが現状。しかし責任レベルを考えてもボランティアではできない仕事だと思う。
 
Q:ボランティアでディサービスに通っているペルー人の話し相手をしている。心の問題が大きく色々な相談ごとに対してどのような会話をしてよいか分からくなるときがある。ボランティアと友人は違うのだろうか。
細井:病院の通訳者からも相談されたことがあったが、きっぱりと線引きすることは難しいが、通訳業務の範疇かプライベートな事かがひとつの目安かと思う。
 
Q:将来的な日本の人口減少には移民の受け入れは不可欠だと思うが、通訳など行政の対応はどうか
林田:アメリカのヒスパニック系人口のように25%(4人に1人)以上であれば重要視されるのだが、今の日本の状況では国会で議題に上ることもない。しかし労働者人口の減少は早急の問題であり、政府がいつ多言語社会を目指すかにかかっている。
 
Q:通訳者の採用にあたって何か基準はあるのか。もしほかに通訳者を雇用する場合、どんな資格があるとよいと思うか
細井:当院の通訳者採用に関しては特に基準はなかった。3人目の方は資格を持っているわけではないが産休に入る通訳者からの紹介で面接に至ったが、心穏やかな人柄でその後も継続雇用となった。精神的な悩みやお金や家族、生活に関する相談が多くなっているのでケースワーカーや社会福祉士の資格があると良いかもしれない。
 
Q:通訳ボランティア登録にはどのような基準があるか
細井:災害があったときに必要になるだろうということで通訳ボランティアの例を挙げたが、まだそのような登録制度は行っていない。しかし、当院でも緩和ケア等ボランティアの方が活動されているので、通訳も含めて色々な方が来ていただけると良いと思う。
 
Q:医療通訳の存在が地域では認識されているとのことだが、豊田市在住のブラジル人の中では豊田厚生病院の通訳者の存在はが広く認知されているのか。大阪府箕面市ではボランティア通訳と連携して母子手帳やお知らせ等を多言語化しているが利用率が低く問い合わせも少ない。認知度を上げるための工夫や情報提供はしているのか。
細井:病院としては特に宣伝はしておらず、口コミで広がっているのだと思う。少し前の愛知万博もひとつのきっかけだったかもしれない。豊田市の場合、広報誌の1ページはポルトガル語で書かれておりそこで情報提供がされている。
 
Q:医療通訳の身分保障についてどのように考えるか
林田:診療報酬の問題があり非常に難しいと思う。現状は受益者負担であり、その受益者の大半は労働者層なのでボランティア頼みとなってしまっている。
 

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