===== 計算機アーキテクチャ ===== コンピュータアーキテクチャは古くから研究されていますが、計算機に求められる性能は年々増加しており、更なる高性能化が求められています。また、近年は単純な計算速度だけではなく、 * 消費電力 * 回路規模 * 開発コスト * 発熱 * セキュリティ など、様々なものが求められています。それらの要求に応える新しいコンピュータアーキテクチャの研究を行っております。 ===== 研究テーマ ===== 本研究室では、以下のような研究に取り組んでいます。 ==== ヘテロジニアスマルチコアプロセッサ ==== 並列計算機だけでなく、近年はスマートフォンや小型モバイル端末にも複数のCPUが乗ったマルチコアプロセッサが用いられており、今後その数はますます増えていくと予想されます。しかし、一般にアプリケーションにより要求される計算資源、例えば整数演算器や浮動小数点演算器、データキャッシュ、命令キャッシュ等は異なっており、現在の汎用プロセッサは平均的なアプリケーションでそれなりの性能が出るようにチューニングされています。そのため、アプリケーションによっては計算資源の過不足が発生します。 そこで、特徴の異なるコアを複数用意し、アプリケーションの特性に合わせて実行するコアを選択するヘテロジニアスマルチコアの利用が進んでいます。本研究では、高性能かつ低消費電力を実現するヘテロジニアスマルチコアプロセッサのアーキテクチャについて研究しています。 * バンクメモリを用いた小面積レジスタファイル * CAM型TLBのRAMを用いた効率的な実装手法 ==== プロセッサ自動設計 ==== ヘテロジニアスマルチコアプロセッサは、高い性能と低い消費電力を両立できる手法として注目されていますが、特徴の異なる複数のコアを設計する必要があるため、設計コストが非常に高いという問題があります。そこで、要求パラメータを与えるだけで特徴の異なる複数のコアを実装したヘテロジニアスマルチコアプロセッサの自動設計技術が強く望まれています。 しかし、近年のプロセッサコアは非常に複雑化しており、単一のスーパスカラのプロセッサコアを実装するだけでも非常に困難です。ヘテロジニアスマルチコアでは、複数のコアを要求仕様に合わせて設計する必要があるため、その設計・検証コストは同種のコアを複数搭載したホモジニアス型マルチコアプロセッサと比較して圧倒的に高くなります。 そこで本研究では、ノースカロライナ州立大学と共同で、ヘテロジニアスマルチコアプロセッサの自動設計に関する研究を行っています。 * FabHeteroによる論理合成可能なヘテロジニアスマルチコアプロセッサの自動設計 * FabCacheによるキャッシュシステムの自動設計 * FabBusによるチップ内バスの自動設計 * FabScalar/AnyCoreによるスーパスカラコアの自動設計(主にノースカロライナ州立大) ==== 高性能低消費電力プロセッサ ==== プロセッサへの要求は様々なものがありますが、その重要な要求課題の一つとして低消費電力化があります。プロセッサの性能向上に伴い消費電力も増加しております。特にモバイル機器ではバッテリによる駆動が多く、プロセッサの消費電力増加はバッテリの駆動時間を縮める大きな要因であり、プロセッサの低消費電力化が強く求められています。また、最近はモバイル端末に限らず、様々な場所でIoT機器が利用されております。IoT機器は人が行きにくい場所、離れた場所に設置されることも多く、安定的な電力供給が望めないケースも多々あります。そのような場所で用いるモバイル用プロセッサは、高い性能と低消費電力の両立が不可欠となっています。 また、モータや照明機器と異なり、動かない、音も光も出さないプロセッサは、消費電力の大部分が熱に変換されます。そのため、チップへの十分な電力供給が可能なケースでも、プロセッサの排熱が間に合わず回路の性能を十分に出せないダークシリコン((消費電力の問題からチップ全体に電力供給できず、一部稼働させられない領域が生じる問題。部屋の照明で、電力が足らず、一部だけ暗くなっているイメージ))と呼ばれる問題もあります。そのため、データセンターのような大規模並列計算機の世界でも低消費電力化は重要な課題となっています((もちろん、データセンターの電気代の問題も大きいですが……))。 * 可変レベルキャッシュ * 可変パイプライン段数プロセッサ * 低消費電力フリップフロップ回路 ==== 組み込みシステム ==== 車載用システムや、エアコン、炊飯器、テレビ等の家電に搭載されている組み込み用システムは、高性能、低消費電力、耐故障性、低コスト、リアルタイム性など様々な異なる要求があります。そのため、要求仕様の異なる様々なプロセッサやシステムの構築は非常に困難です。そこで、本研究室では、これらの問題を解決する様々な取り組みを行っています。 * 論理合成可能な組み込み機器用プロセッサ * 低消費電力化を目指したタスクスケジューリング * 組み込み機器用小フットプリントはトランザクショナルメモリ * 組み込み機器向け論理合成可能な低消費電力プロセッサ ==== IoT向け低フットプリント信号解析器 ==== IoTの普及とともに、工場や医療、畜農産等、様々な分野で信号処理が利用されています。本研究では、その中でもセンサーの周波数解析を高速、低消費電力、低コストに実現するためのシステム開発に取り組んでおります。