人の生体信号を情報通信技術に活用

河中准教授

自動運転時代の路面標示状態マネジメント

 当研究室では、周辺環境や状態変化を計測・認識するための画像処理およびパターン認識について研究しています。 例えば、車線逸脱防止システムは道路の両側にある白線を認識して走行領域がその中に収まるように車両の制御をしますが、このシステムが正常動作するためには白線を正確に認識することが必要です。また、安定動作のためには白線が消えていたり剥がれていては困ります。 そこで、当研究室ではその状態把握を可能とする画像計測システム(Road Line Checking System)を導入し、街中の路面標示の状態をデータベース管理して劣化の分析を行っています。RLCSは車載カメラを搭載した計測用車両が普通に道路を走行するだけで路面標示の劣化状態や劣化進度を一括して測定・管理するシステムです。路面標示の剥離率は画像処理によって実現します。ドライブレコーダのような走行動画から路面の俯瞰画像を生成して、走行速度と画像のフレームレートから適切なサイズのROIを設定することで、単純なサンプリング調査では見逃してしまう劣化をもピクセル単位で推定することができます。 データ管理はGISを利用し、道路リンクごとに評価画像、剥離率、目視評価ランクおよび日付や天気などの計測に付随する情報をデータベースに蓄積し、劣化した白線の位置や状態変化を容易に調べることができます。これは、場所ごとに異なる路面標示の適切な塗り替えタイミングの決定や劣化の予測に基づく修繕計画の検討を可能にします。また、情報はネットワークを介して走行中の車両へ提供することで、様々な運転支援システムに貢献することが期待されます。

トイレは健康情報の宝庫 流して捨てるだけではもったいない

  例えば、トイレ空間で人間の健康に関わる情報を簡便に記録することで、生活習慣の改善に役立てられる可能性があります。尿や便はそれが排泄されるときに、太さ、大きさ、固さが様々であったり、勢いや飛び散り具合いなども様々で、これらの指標は尿道や膀胱または腸や肛門の状態といったその日の健康状態と大きく関連します。また,尿や便の色も重要な情報になります。尿の色は人間の食生活や健康状態を示す指標として使用されており、便の色は大腸癌など様々な病気の早期発見にも役立てられています。このように排尿および排便の情報を記録することで様々な利点があるのです。
しかしながら、日常の排泄物はただ捨てられるだけで、これらの有益な情報が病気の診断や健康状態の判定に使われている例はほとんどありません。なぜならそれらを簡易に測定記録するシステムが実現されていないからです。とくに、利用者が測定を意識することなく自然な普段どおりの排泄を行えなければ有効な指標を得ることができません。例えば、軽量カップに採尿するのでは、自然な普段どおりの排泄ができないことがこれまでの研究で明らかにされています。
そこで、我々は排尿を簡便に記録することを目的として、カメラで便鉢内を撮影することで、放射される液体として尿を捉え、その運動を画像計測する方法を提案しています。液体は空中に放射された後、重力によって曲線を描きますが、その流脈線を放物線として近似することで排尿の勢いや排尿量(体積)を計算します。そのために多重円柱モデルを定義し、放射流脈線画像からの流量および流率の測定を可能にしてきました。
只々捨てられていた有益な情報を診断や健康管理のために活かせるシステムの実現を目指しています。そのためにコンピュータビジョン及びパターン認識の基礎理論からひとつずつ積み上げて研究を進めています。

 

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