当研究室の主な研究テーマは、神経情報科学(ニューロインフォマティクス)です。これは神経科学と情報科学が学際的に融合した学問分野で、脳神経システムの仕組みを研究する情報学といえます。
人間や生物の行動や思考は、視覚や聴覚などから得られる情報を抽出し、脳や神経で処理することで実行されています。その脳神経系や循環器系の仕組みをデータベース化し、コンピュータ上で数理モデル(数学的モデル)を構築、生物の行動を仮想的にシミュレーションすることを目指しています。
人間の行動は、必ずしもコンピュータのような論理的思考ではありません。例えば「だまし絵」は、同じ絵なのに、なぜ人により見え方が違うのか? 目に光が入ると、どんな電気信号が作られ、どのように脳に伝達され、どの時点で情報に人ごとの差異が生じるのか。その仕組みを細胞レベルから理解できるなら、だまし絵の謎を解くことができるはずです。
このような複雑な数理モデルを、情報科学の技術や手法を駆使して構築できれば、その技術は細胞や神経組織レベルでの疾病メカニズムの解明や、シミュレーションによる新薬の開発(創薬)といった、医療分野への応用にも活用できるでしょう。さらに当研究室では、血管構造の数理モデルからの「動脈硬化の超早期発見」の研究も推進しています。
また、ヒトの神経情報処理に基づいたロボット開発など、ロボット工学への応用にも期待されています。