医用画像処理に関する研究   

−◇−◇−◇−アメリカ・シカゴ大学鈴木ラボとの共同研究 −◇−◇−◇−    

  

 

 

共 同 研 究 の 目 的

シカゴ大学鈴木ラボと私どもの研究室では,計算機・情報科学と医学との境界領域の研究,特に,コンピュータ支援診断(Computer-Aided Diagnosis: CAD)とそれに不可欠な画像処理,パターン認識,機械学習(Machine Learning)を中心に研究開発を進めています.私どもの夢は,医師が何気なく,あるいは,熟練の専門医が長年の経験により行っている,認識や判断を人工的に実現し,医師を支援する知的なシステムを開発することにあります.このためには,洗練された要素技術の開発とその理論体系作り,医師の診断プロセスとヒトの脳を含む視覚システムの理解が不可欠と考えています.

 

米国では,病気で死亡する人のおよそ半分が,悪性腫瘍(がん)あるいは心臓病で亡くなっています.心臓病による死亡者数は年々減少していますが,がんによる死亡者数はほぼ横ばいで,心臓病による死亡者数をやがて上回るとも言われています.一方,日本では,がんが25年に渡って死亡原因の第一位を独走しており,その死亡者数は年々増え続けています.世界的にも,がんによる死亡者数は急激に増加しており,WHO(世界保健機関)によれば,2020年には,がんによる死亡者数が50%も増加すると予測されています.このように,がんは我々の生死に直接関わり,がんによる死亡者数を減らすことは,社会的にも,医学的にも,また,世界的にも,大変重要な課題といえます.そこで我々は,がんによる死亡者数を減らすことを目標に,以下のような,がんの診断を支援するためのCADの研究開発を進めています

 

1.     肺がんのためのCADの研究開発

 

米国において,全てのがんの中で,死因の第一位を占めるのは肺がんです.日本でも,肺がんは男性のがん死亡の第一位を,女性では胃がんに次ぐ第二位を占めています.

 

1.1 "仮想デュアルエネルギーレントゲン像":胸部X線像からの肋骨分離手法の開発

ある臨床研究によれば,胸部X線像において,医師により見落とされた肺がんの80%が,肋骨や鎖骨に重なっていたと報告されています.もしも,肺がん検出の妨げとなる肋骨をX線像から分離することができれば,この見落としを軽減できるものと期待されます.従来より,エネルギーの違う2つのX線(デュアルエネルギーX線)を使うことにより,X線上で骨と軟組織を分離可能であることが知られています.しかし,この方法では,患者への放射線被曝が原理的に2倍となるだけでなく,デュアルエネルギーX線を発生させる特別な装置が必要です.我々は,この肋骨と軟組織の分離を,画像・パターン認識により行う手法の開発を行っています.この方法よれば,患者への放射線被曝を増やすことなく,医師による肺がんの見落としを防ぐことができるものと期待されます.

   
X線像の肋骨と軟組織の分離.左からそれぞれ,原画像,我々の方法により得られた軟組織画像,骨画像.

 

1.2 お手本から"学ぶ"画像処理を利用した肺がんの検出

 

人体の中にある病巣を対象とする医用画像と,主に人工物を対象とする他の多くの画像との大きな違いは,他の多くの画像では,対象物を既存のモデルや形状などで記述できますが,医用画像では,それが一般的に困難であることにあります.例えば,道路交通画像で認識対象となる「車」は,4つの円柱形の車輪と直方体を組み合わせたもの,と記述することが可能ですし,文章画像中の文字「8」は,円を2つ上下に組み合わせたもの,というように記述できます.しかし,肺にできる肺がんは,そのステージによっても,できる場所によっても,大きさ,形状,模様などは様々で,これを簡単なモデルで記述することは困難です.このため,医用画像からの病巣の認識では,お手本や例から"学ぶ"ことが,本質的に必要であり,大変重要な役割を担います.我々は,"例からの学習"によって病巣を学ぶことができる画像処理を開発し,それを用いて,胸部CT画像あるいは胸部X線像から,肺がんを検出する手法を開発します.

 

肺のCT画像(矢印の先にある小さく淡い陰影が肺がんである)

 

1.3 正常陰影の理解に基づくCADの開発

 

2.     大腸がんのためのCADの研究開発

 

米国において,大腸がんは,がん死亡の第二位を占めています.日本でも,食生活の欧米化に伴い,大腸がんの患者の発生率は年々増加しており,女性では2004年から胃がんを抜き一位,男性でも2015年には肺がんと並ぶと予想されています.

 

2.1 医師の見落とし易い病巣に強いCADの開発

 

2.2 医者の判断によく"馴染む"がんの体積測定手法の開発

 

3.     肝臓がんのためのCADの研究開発

 

日本において,肝がんは,男性のがん死亡の第三位,女性の第四位を占めています.米国では,肝臓がんの患者数が年々増えており,少なくとも今後20年以上は,増え続けると予想されています.

 

3.1 解剖学的構造の認識に基づく高精度臓器抽出手法の開発

 

3.2 CTにおける肝腫瘍の検出と良悪性の鑑別手法の開発

 

3.3 組織の認識と理解に基づく医用画像の画質改善手法の開発

 

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